脂質を使って走れ!糖質制限より優れたファットアダプテーションとは

糖質を補給せずに、脂質(ファット)を有効活用しながら走り続ける。そんな状態に憧れを抱いている方も多いのではないでしょうか。

以前の記事「VO2MAX、AT値、AeT値などランニングアビリティを測定してきた」、「食べ物を受け付けなくなる胃腸トラブルの対処法を考える」では、では、次のように述べました。

トレイルランニングは胃を激しく揺らしながら走るため、胃の調子が悪くなることが多い。糖質の補給が難しくなることを考えると、AT値を上げて脂質をできる限りエネルギーとして使い続けられるようにしたほうが良い。

この「AT値までの心拍数で、糖質よりも脂質をエネルギー源として優先的に使う身体」に適応させることを、ファットアダプテーション(脂質適応状態)と呼びます。そして、そのための食事法がファットアダプト食事法です。

サッカー選手の長友佑都さんが実践し、高いパフォーマンスを発揮できたことで、この食事法は広く知られるようになりました。

ざっくりとしたイメージとして、糖質と脂質の比率を「50%:50%」から「20%:80%」へとシフトさせるような形です。

糖質制限ダイエットの経験

4年ほど前、ダイエット目的で糖質制限ダイエットを実践しました。

  • 糖質を減らすことで脂肪が燃えやすくなり、体重が減る(糖新生、ケトン体の利用)
  • 必要量のタンパク質を摂取し、筋肉を増やして基礎代謝を上げることで、痩せやすい体質をつくる

ライザップの手法と同じですね。

確かに体重は減りましたが、糖質を完全に断つのは思った以上に大変でした。

  • 甘いものが食べられないことでストレスが溜まり、常に「ダイエットを意識し続ける」状態が辛かった
  • ケトン体の影響で体臭が変化し、自分では気づかないものの、周囲に「果物が腐ったような甘酸っぱい匂いがする」と言われたことも…(泣)。

ただ、良かった点もありました。それは「血糖値スパイクが起きないこと」です。

空腹時の血糖値は正常でも「食後1-2時間のうちに急激に高血糖(140mg/dl以上)となる」病態が血糖値スパイクです。このように激しく血糖値が変動することによって、食後に眠気や頭痛などを感じることもあります。また、空腹で行う健康診断では正常と判断され、放置されるため気付かないうちに血管が高血糖によるダメージを受け、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血、更にはがん、認知症等のリスクが高まることが知られています。

糖質制限を始めて最初の1ヶ月は、糖質不足で頭がぼーっとする感覚がありましたが、その後は明らかに体調が良くなりました。特に、昼食後の強烈な眠気がなくなり、頭が冴えて仕事のパフォーマンスが向上しました。この1年は仕事の成果も最も出ていたように思います(この食事法だけが理由ではないかもしれませんが 笑)。

また、糖質に比べてタンパク質や脂質のほうが満腹感を得やすいという利点もありました。焼き肉やステーキを食べると意外と早くお腹いっぱいになりますよね。特に脂質を多く含んでいると、より満足感を得やすいようです。

一方、糖質を摂取すると血糖値スパイクが発生し、インスリンによって急激に血糖値が下がることで、脳が「エネルギー不足」と誤認し、再び空腹を感じることになります。

ファットアダプト食事法(ファットアダプテーション)は何が違うのか?

ファットアダプテーションは何が違うのか?

ファットアダプテーションの基本は糖質制限ダイエットと同じで、糖質の摂取を抑え、脂質をエネルギーとして効率よく利用できる身体を目指します

ただし、血糖値スパイクが起こらない(140mg/dL未満)範囲であれば、糖質を摂取しても問題ありません。これは、糖質制限ダイエットでデメリットとして挙げられる点を克服しているため、私にとっては嬉しいポイントです。

また、タンパク質の摂取に関する考え方も同様で、筋肉を維持・増強し、基礎代謝を向上させることで燃焼効率を高めます。

ファットアダプテーションでは「良質な脂質」を積極的に摂取することを重視している点が大きな違いです。

糖質制限(ライザップ)ファットアダプト食事法
糖質× 摂らない○ 血糖値スパイクしない程度に摂って良い
タンパク質◎ 基礎代謝上げるために摂りましょう◎ 基礎代謝上げるために摂りましょう
脂質(未考慮)◎ 良質の物を摂りましょう

良質な油を摂取することで、細胞膜の脂質が質の良いものに置き換わり、筋肉の弾力や柔軟性が向上すると言われています。

私のように体が人一倍硬い者にとっては、大きなメリットです。柔軟性が高まることで、ケガの予防につながるだけでなく、筋肉を効率よく活用できるようになります。

たまに、筋肉が驚くほど柔らかく、指で押すと奥まで沈み込むような人がいますよね。まさに筋肉の質が良い人です。

私も、省エネで効率的に筋肉を使いながらトレイルランニングができるようになりたいものです。

ファットアダプト食事法と金森式ダイエットとの違いは?

ちなみに、金森式ダイエットという方法があります。脂質の摂取に関してはファットアダプテーションに近く、糖質制限の考え方はライザップに近いものです。

「脂質をエネルギーとして活用しながら走る」という目的であれば、金森式ダイエットも選択肢の一つになるでしょう。

ただ、私はそこまでストイックにはできないので、ファットアダプテーションの食事法を続けています😋

金森式ダイエットファットアダプト食事法
糖質× 摂らない(野菜も取らない)○ 血糖値スパイクしない程度に摂って良い
タンパク質○適度な量とりましょう◎ 基礎代謝上げるために摂りましょう
脂質◎ 良質の物を摂りましょう◎ 良質の物を摂りましょう

自分にとって血糖値スパイクを起こさない糖質量は?

幸い(?)、妻が妊娠中で妊娠糖尿病の疑いがあり、血糖値を測定する機器を持っていたため、私も試しに測ってみました。(本当はダメですが、少しだけ…)

まず、注射針をセットし、ボタンを押すと指先に針が刺さる仕組みです。これが思った以上に痛い…! そして、出てきた血を測定器に付けて数値を確認します。

血糖値測定-注射
血糖値-食後1時間後

血糖値-食後1時間後

血糖値-食後2時間後

血糖値-食後2時間後

血糖値-起床後食前

血糖値-起床後食前

前提として、今回は食事で糖質49.1gを摂取した際に血糖値を測定しました。

このときの食事内容は、雑炊2人分(23.6g)+はちみつ入り梅干し(3g)+バナナ(22.5g)です。

私の場合、1食あたり約50gの糖質では血糖値スパイクを起こさないことが分かりました。つまり、この範囲であれば摂取しても問題ないということになります。時間があれば、さらに限界値を探ってみたいところです。

こういった測定器はAmazonや楽天でも購入できます。また、「食後に眠くならない糖質量=自分にとって適切な糖質量」と考えるのも一つの方法かもしれません。


良質な油を摂る – 流行りのMCTオイル、アマニ油など

糖質制限にはない、ファットアダプテーションの差別化ポイント

これまで特に意識せずに脂質を摂っていましたが、実は油は大きく4つの種類に分類できるようです。

ポイント

  1. 飽和脂肪酸
    牛肉、卵、バターなど動物性食品+ココナッツオイルの植物性食品
    炭素数(鎖の長さ)によって、
    「長鎖脂肪酸」と「中鎖脂肪酸」と「短鎖脂肪酸」の3つに分類される。
  2. オメガ9脂肪酸
    オリーブオイル、アボカド
  3. オメガ6脂肪酸
    紅花油、胡麻油など植物油
  4. オメガ3脂肪酸
    サバ、イワシ、アジといた青魚。エゴマ油やアマニ油など。

補足

– 長鎖脂肪酸…主に肉類に含まれ、消化吸収が遅く、体に蓄積されやすい
– 中鎖脂肪酸…主にココナッツオイルに含まれ、素早く消化吸収され、体に蓄積されにくい。今流行の「MCTオイル」はこれのこと。
– 短鎖脂肪酸…主に乳製品に含まれ、消化吸収されやすく、体に蓄積されにくい

オメガ兄弟 – オメガ3とオメガ6の関係

偏りなく、バランスよく摂ることが大切

自分はこれまで、オメガ9脂肪酸とオメガ3脂肪酸をあまり意識して摂っていませんでした。もしかすると、イタリア人の食生活は意外と理にかなっているのかもしれません。

オメガ3とオメガ6は、バランスよく摂取する必要があると言われています。
特に、比率が「1:2」を超えてオメガ6が多くなりすぎると、動脈硬化を引き起こし、「脳梗塞」や「心筋梗塞」などのリスクが高まるそうです。さらに、「花粉症」や「うつ病」などの発症にも、このバランスが関係していると言われています。
(引用:NHKスペシャル ~発見!人類を救う“命のアブラ”~)

摂るべきでない油を摂っていた…

まず、一つ目は酸化した油
スーパーで売られている揚げ物には、古い油が使われていたり、何度も揚げ直されていることがあります。その結果、油が酸化し、細胞を傷つける原因になるそうです。もちろん、すべてのスーパーが悪いわけではありませんが、二度揚げされていそうなコロッケや唐揚げをよく買っていたなぁ…と反省。

もう一つは人工的な油、トランス脂肪酸
マーガリンが代表的ですが、これは心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクを高める可能性があるとのこと。妻に教えてもらうまで、ずっとマーガリンを使っていました。バターとの違いも分からずに…。

意外だったのは、「油自体は太る直接の原因にはならない」ということ。
脂肪が体脂肪として蓄積されるのは、油とグリセロール(糖質・血糖)が組み合わさったとき。つまり、糖質を摂りすぎなければ太らない、ということになります。

ファットアダプテーションを試します

トレイルランナー、特にへっぽこな私にとっては、「脂質で走れる」「筋肉の質が変わる」というのは理想的です。

MCTオイルは、仙台勝山館のものを愛用しています。質が良く、安心して使えるココナッツベースのMCTオイルです。

仙台勝山館の姉妹ブランドのMCTオイル。パームベースで価格が安いのが特徴です。

生成されるのは同じ中鎖脂肪酸なので、最近はこちらも試しています。(2020/07/29)

わたしの場合は

  • 糖質は1食 50gほどに抑える
  • 油はオリーブオイル、アボカド。サラダにはアマニ油をかけることでオメガ9と3脂肪酸の摂取量を増やす
  • オメガ6は取りすぎているので控えめにする
  • 他、飽和脂肪酸はMCTオイルで(ただし、ケトン体が増えるので体臭には気をつける
  • タンパク質は110〜120g/日、摂取する
  • 食べる順番はサラダ、タンパク質・脂質、最後に糖質(ご飯とか)
oils

1ヶ月ほどで、体に変化が現れ始めると言われています。
今後もファットアダプト食事法の効果を随時報告していく予定です。乞うご期待!

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